作業マニュアル

ハンガーアップ作業の注意点

たかがハンガー、されどハンガー

私たち幸新物流センターでは海外で生産された製品を、ハンガーに掛けスチームのトンネルに流したり、平アイロンをして整えて、そしてカバーをかけてハンガー車にて出荷させていただく業務を行っております。その際に注意すべき点を今回は、見落としてしまったため起こった問題を備忘録的に記事にしたいと思います。

今回はワンタックのパンツでセンターにクリーズ線(折れ線)が入った、いわゆるスラックスタイプのパンツです。パンツ用のハンガーにセンターバックセンターフロントを基準に二つ折りにした状態が完成です。お客様にサンプルをお預かりしていたので、その通りに左の写真のようにハンガーに掛けていきました。そして、トンネル型の蒸気アイロンに通す作業を行いました。
その結果、もともと少しついていたクリーズ線を消して、センターからずれた状態でクセがついた状態で上がってきてしまいました。

右の写真はトンネルアイロンを通した後に、平アイロンでクリーズ線を入れる工程に入ろうとしたときのものです。赤線が元のクリーズ線で、かなりパンツの内側に入った状態です。そして自ずと内股の線と黄色の脇線がかなりずれたままで、クセがついてしまっています。せっかく大まかなシワは落とせたのですが、これによって内股線と脇線を合わせるのに、かなり手こずってしまうことになりました。


シワを落とすアイロンと成形アイロン

アイロンには、シワを落とすアイロンと形を整えるアイロンがあります。トンネルのようにハンガーに吊るした状態でスチームを当てるのは、シワを落とすアイロンの部類で、水蒸気と熱で生地を柔らかくし、生地の重さと製品そのもの自重を利用して、自然に任せて下向きにシワを伸ばす要領で行います。最近よくCMで見かける家庭用のスチームアイロンもハンガーに掛けたままで、同じ要領でシワを伸ばすことになります。つまり、ハンガーの掛け方次第で生地は素直にシワを落とすということになります。

ワンタックのスラックスの場合は、左の写真のようにセンターのクリーズ線の膝上くらいからタックを開いて、膝の曲げ伸ばしにゆとりを持たせている設計ですので、パンツの中心を意識してハンガーに掛けると、右の写真のように掛けるのが自然な形状になります。この状態でトンネルのスチームに掛けると、下のような写真の出来上がりになりました。

これで、もともとつけられてたクリーズ線は活かしたまま、股下線と脇線がさほどずれていない状態で平プレスのアイロンをかけることができ、時間のロスを減らすことができます。

とにかく急いでハンガーに掛けることや、サンプルの通りに、ということに意識が行きがちですが、今回はハンガーの掛け方によって後の作業の手間が大きく変わるということを再認識することになりました。今回のようにスラックスパンツであれば、センターを意識する必要がありますし、トップスであれば肩線の位置を意識する必要があります。特にトップスの肩は縫い目が肩の位置ではないように設定されてる場合が多いので、デザインによって調整する必要もあります。それによってスチーム後の出来に大きく影響し、また後の作業にも影響するので、後のことを考えて仕事を進めていく必要があると改めて実感しました。

こういったことを意識すると、お客様のところに商品が届くときに、早くいい品が届けられると考えて、日々の業務に励みたいと思います。